「3Dプリンターでどんな素材が使えるんだろう?」
「金属や樹脂などいろいろあるけど、どれを選べばいいのか分からない…」
そんな悩みを抱えて検索している方も多いのではないでしょうか。
実は、3Dプリンター素材の種類を理解することで、作品の強度・仕上がり・コストが大きく変わります。
素材の特性を知れば、「壊れにくい」「滑らかな質感」「透明感のある仕上がり」など、理想の造形を実現できるようになるのです。
この記事では、3Dプリンターで使える代表的な素材を金属・プラスチック・樹脂に分けてわかりやすく解説します。
それぞれの素材の特徴・価格相場・おすすめの用途まで紹介し、あなたの目的にぴったりな素材選びをサポートします。
【3Dプリンターで使われる素材とは?基本を理解しよう】
①3Dプリンターの素材が重要な理由
3Dプリントの完成度は、造形方式だけでなく素材の物性によって大きく左右されます。層間の密着性、反りの発生しやすさ、表面の滑らかさ、耐熱性や耐薬品性といった指標は、選ぶ素材によって明確に異なります。狙う品質に対して過剰な物性を選べばコストが増え、逆に必要条件を満たさない素材を選べば造形後の破損や使用中の不具合につながります。用途、求める強度、見た目、後加工の予定、運用コストの上限といった要件を先に定義し、それを満たす素材から逆算することが効率的な進め方です。
②素材によって変わる造形のクオリティとコスト
同じモデルデータでも、PLAとABSでは反りの発生傾向と仕上がりが異なり、PETGは層間強度の安定性が相対的に高く、ナイロンは耐久性と耐摩耗性に優れます。光造形レジンは微細表現に強く、塗装の下地として滑らかな肌を得やすい一方で、紫外線や熱への耐性は配合によって差が出ます。金属粉末を用いる場合は初期費用も運用費も高くなるものの、機能部品としての耐久性や寸法安定性で優位性があります。結果として、素材の選択は見た目だけでなく、コスト構造や製作リードタイムにも連動します。
③主な造形方式と使用できる素材の関係
代表的な方式として、熱溶解積層方式はPLA、ABS、PETG、TPU、ナイロンなどの熱可塑性樹脂フィラメントに対応します。光造形方式はフォトポリマー樹脂が対象で、標準、高強度、耐熱、柔軟、透明などの特性別レジンが用意されています。粉末床溶融結合法はナイロンやポリアミドの粉末、マルテンサイト系やオーステナイト系ステンレス、アルミニウム合金、チタン合金などの金属粉末を扱います。方式と素材の適合関係を理解することにより、設計段階で公差や肉厚、サポート方針、後加工プロセスまでを一貫した前提で決定できます。
【3Dプリンター素材の種類一覧|金属・プラスチック・樹脂の特徴を解説】
①プラスチック系・樹脂系・金属系の3分類とは
3Dプリンターで扱う素材は、大きくプラスチック系、樹脂系、金属系に分けられます。プラスチック系は日用品から試作品まで幅広い用途に対応し、価格と取り扱いの容易さが強みです。樹脂系は微細形状の再現性と表面の滑らかさに優れ、塗装や透明表現を重視する用途に適しています。金属系は機能部品の試作や小ロット製造に向き、耐熱性、耐食性、比強度などの観点で優位です。どの分類も共通して、最適解は用途の要件次第で決まります。単純な強度の大小だけでなく、環境条件、後加工の難易度、求める表面性状、調達性までを含めて評価する必要があります。
②素材の種類ごとの特徴比較表
用途に合わせた初期検討がしやすいよう、分類ごとの一般的な傾向を整理します。個々の製品や配合により数値は変動しますが、選定の出発点として有用です。
| 分類 | 代表素材の例 | 造形の しやすさ |
表面性状 | 強度・ 耐久性 |
耐熱性 | 価格傾向 | 主な用途の例 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| プラスチック系 | PLA, ABS, PETG, ナイロン, TPU | 高い | 中程度 | 中〜高 | 低〜中 | 低〜中 | 試作品、治具、日用品 |
| 樹脂系 | 標準レジン, 高強度レジン, 耐熱レジン, 柔軟レジン, 透明レジン | 中〜高 | 高い | 中〜高 | 中 | 中 | フィギュア、意匠試作、微細造形 |
| 金属系 | ステンレス, アルミニウム, チタン, ツール鋼等 | 低(装置前提) | 中 | 高い | 高い | 高 | 機能試作、最終部品、小ロット製造 |
表の「造形のしやすさ」は、装置条件の厳しさやトラブルの起きにくさを総合的に示しています。プラスチック系は家庭用を含む広い装置で扱いやすく、樹脂系は安全管理と後処理の手順を守ることで再現性が安定します。金属系は専門装置と周辺設備を前提とし、粉末管理や熱処理、仕上げ加工までを一貫管理する体制が求められます。
【プラスチック系素材の特徴と向いている用途】
①PLA(扱いやすく環境にやさしい定番素材)
PLA(ポリ乳酸)は、トウモロコシやサトウキビなどの再生可能資源から作られる生分解性プラスチックです。低温で溶融しやすく、造形中の収縮が少ないため、初心者でも安定した出力が得られます。造形面が滑らかで色の発色も良く、装飾品や模型、家庭用アイテムなど見た目を重視する用途に適しています。ただし耐熱性が低く、60℃前後で変形するため、屋外や高温環境での使用には向きません。環境負荷が小さい点や、取り扱いのしやすさから、教育現場や個人利用の定番素材とされています。
②ABS(強度と耐熱性に優れた実用向け素材)
ABS樹脂は工業製品にも広く使われる素材で、PLAに比べて高い衝撃強度と耐熱性を持ちます。試作品や治具、機械カバーなど、一定の機能性を求める造形物に適しています。造形時には反りや収縮が起こりやすく、プラットフォームの加熱や造形室の温度管理が必要です。また、加熱中にスチレン臭が発生するため、換気対策も欠かせません。仕上げの研磨や塗装がしやすく、後加工性にも優れています。
③PETG(柔軟性と強度のバランスが取れた万能素材)
PETGは、PET(ペットボトル素材)にグリコールを加えて改良した素材です。PLAの扱いやすさとABSの強度を兼ね備え、反りが少なく層間接着性が高いのが特徴です。透明度が高く、美観が求められるカバーやディスプレイ部品などに利用されます。化学的に安定しており、湿気に強いため、屋内外どちらの環境でも使いやすい素材です。耐熱性はABSほどではありませんが、家庭用・業務用問わず安定した成果を得られる汎用素材といえます。
④ナイロン(高強度で機能部品にも使用可能)
ナイロン(ポリアミド)は、柔軟性と高い引張強度を併せ持つ高機能プラスチックです。ギアやヒンジ、スナップフィットなどの機械部品に多用され、摩耗や衝撃に強い点が評価されています。吸湿性が高いため、造形前に乾燥させることが重要です。やや高温条件で造形する必要がありますが、完成品の耐久性と弾力性は優れています。工業・自動車・家電分野の試作部品など、実用的な用途で選ばれる素材です。
⑤TPU・TPE(柔らかくゴムのような弾力素材)
TPU(熱可塑性ポリウレタン)やTPE(熱可塑性エラストマー)は、ゴムに近い弾力を持つ柔軟素材です。スマートフォンケース、シール部品、パッキンなど、柔らかさが求められる製品に適しています。造形時にはフィラメントの送り出しが難しく、押出機構の制御がポイントになります。衝撃吸収性や耐摩耗性が高く、滑りにくさやグリップ性が必要な製品設計に向いています。
【樹脂系素材(レジン)の特徴と活用シーン】
①標準レジン(滑らかで精密な造形向け)
光造形方式で最も一般的なのが標準レジンです。硬化精度が高く、0.05mm以下の細部も表現可能で、造形面が滑らかです。塗装前提のフィギュアや意匠モデル、歯科模型など、表面の美しさを求める造形に適しています。一方で、衝撃に弱く、落下や曲げにより破損しやすいため、機械的な負荷がかかる部品には不向きです。造形後は必ずUV硬化と洗浄を行い、完全に乾燥させることが品質維持の鍵になります。
②高強度・耐熱レジン(機能試作品向け)
エンジニアリング用途では、高強度レジンや耐熱レジンが選ばれます。これらは標準レジンよりも硬化密度が高く、150℃前後の耐熱性を持つ製品もあります。ギアや治具、カバーなど、実際の環境下での試験にも使用できます。粘度が高いためプリント条件の調整が難しく、サポート除去もやや手間がかかりますが、完成品の寸法精度と強度は高い水準を保ちます。
③柔軟・透明レジン(特殊造形やフィギュア用途)
柔軟レジンは、シリコンのようなゴム弾性を持ち、押し込みや変形に耐えます。医療モデル、着脱部品、柔らかいカバー類に利用されます。透明レジンは光透過率が高く、クリスタル調の外観を得られます。照明パーツやデザイン試作、アート作品など、視覚的な美しさを重視する分野で人気です。いずれも環境光で黄変しやすいため、保管には遮光対策が推奨されます。
④レジン素材を使う際の注意点
レジンは紫外線硬化型の液体樹脂であり、取り扱いには一定の安全管理が必要です。造形後の洗浄に使用するIPA(イソプロピルアルコール)は引火性があるため、換気を十分に行い、手袋と保護メガネを着用します。また、未硬化樹脂が肌に付着した場合はすぐに洗い流すことが大切です。適切な処理を行えば、安定した寸法精度と高品位な仕上がりを長期間維持できます。
【金属系素材の特徴と産業分野での活用例】
①ステンレス(試作から量産まで幅広く活躍)
金属3Dプリントの代表格がステンレス鋼です。耐食性が高く、後加工や溶接にも対応しやすいため、治具や工具、機械構造部品など幅広い分野で使われます。SUS316Lなどは医療機器や食品機械にも利用され、強度と衛生性の両立が可能です。粉末焼結後に研磨や熱処理を行うことで、表面性状と機械的性能をさらに向上させられます。
②アルミニウム(軽量で高い加工性を持つ素材)
アルミニウムは軽量で熱伝導率が高く、自動車や航空機の部品試作に最適です。従来の切削加工では難しかった複雑形状も、積層造形によって一体成形が可能になり、軽量化と剛性確保を両立できます。特に熱交換器や軽量フレーム、金型の冷却チャンネル構造など、設計自由度を最大化できる分野で導入が進んでいます。
③チタン(高強度・耐腐食性を誇る高級素材)
チタン合金は比強度が高く、航空宇宙・医療・スポーツ分野など、軽量かつ高耐久が求められる用途に使われます。腐食や疲労に強く、過酷な環境下でも性能を維持できます。一方で、粉末のコストが非常に高く、造形条件も厳密であるため、量産よりも高付加価値部品や限定製品向けです。
④金属3Dプリントが利用される代表的な業界
金属3Dプリントは、航空宇宙、自動車、医療、金型製造など、精密かつ高強度な部品が必要な分野で普及しています。航空機のエンジンパーツ、インプラント、金型の冷却回路など、従来工法では不可能だった設計を可能にし、リードタイム短縮や軽量化、材料効率化に寄与しています。近年では研究開発コストの低下により、少量多品種生産でも採用が進んでいます。
【用途別に見るおすすめ素材の選び方】
①日用品・雑貨を作りたい場合
家庭用3Dプリンターで日用品や雑貨を製作する場合、扱いやすさと安全性が重視されます。PLAは低温で造形でき、臭いや有害ガスが発生しないため、初心者でも安心して使用できます。装飾品、スタンド、収納小物など、機械的負荷の少ないものに向いています。屋外で使う場合は、湿気や熱による変形を避けるためにPETGを選ぶとよいでしょう。PETGは透明感があり、清潔感を重視するキッチン用品などにも適しています。いずれも印刷後の研磨や塗装が容易で、見た目の完成度を高めやすい点が特徴です。
②フィギュア・模型を作りたい場合
キャラクターフィギュアや建築模型など、精密でリアルな色表現を求める場合には、フルカラーアクリル樹脂素材(インクジェット方式/Material Jetting方式) が最適です。
この方式では、液状のアクリル系樹脂を微細なノズルから噴射し、UV光で瞬時に硬化させながら積層します。インクジェットプリンターのように複数のカラー樹脂を混合して噴射できるため、フルカラー造形が可能で、塗装なしでも完成品のような表現が得られます。
アクリル系樹脂は表面が滑らかで光沢があり、細部の再現性にも優れています。特にキャラクター造形や展示用模型、製品モックアップなどでは、印刷直後の色味の美しさが評価されています。耐熱性や柔軟性は低めですが、視覚的完成度の高さでは他の素材を凌駕します。
また、フルカラー出力では半透明やグラデーション表現も可能で、肌の質感や質量感、衣服の陰影まで立体的に再現できます。塗装工程が不要なため、制作スピードの短縮やカラーバリエーション検証にも向いています。高精度・高彩度な仕上がりを求める場合は、アクリル系樹脂によるフルカラー3Dプリントが最も効果的な選択肢といえるでしょう。
③工業製品・機械部品を試作したい場合
実用的な部品や試作品を造形する場合、素材の物性が重要になります。ABSやナイロンは、耐衝撃性と耐摩耗性を備えており、ギアやカバー、治具の試作に向いています。ABSは寸法安定性が高く、ねじ止めや接着加工も容易です。ナイロンは繰り返しの可動にも強く、柔軟な部品にも適応します。さらに高温環境で使用する場合は、耐熱レジンやポリカーボネート系フィラメントが候補になります。強度と耐熱性を両立する素材を選ぶことで、実際の使用条件に近い評価が可能になります。
④医療・教育・アートなどの特殊分野で使いたい場合
医療分野では、患者データから作成する骨模型や手術シミュレーターにレジン素材が活用されています。滅菌が必要な場合にはナイロンやPEEKなどの高耐熱素材が用いられます。教育分野では、安全性と印刷の安定性を重視し、PLAが主流です。アート分野では、TPUなどの柔軟素材や透明レジン、金属素材を組み合わせることで独創的な表現が可能になります。特に金属素材は造形後の研磨や酸化処理で質感をコントロールでき、造形そのものが作品表現の一部となります。
【価格相場で比較!素材ごとのコスパと選定ポイント】
①プラスチック系素材の価格目安
プラスチック系フィラメントは、素材の中でも最もコストパフォーマンスに優れています。PLAやABSは1kgあたり2,000〜4,000円が一般的で、PETGはやや高めの3,000〜5,000円程度です。ナイロンやTPUなどの特殊素材は、品質安定のため乾燥管理が必要ですが、5,000〜7,000円前後で入手可能です。安価な製品を選ぶ場合は、径の均一性や乾燥状態を確認することが大切です。品質のばらつきは造形不良の原因となり、結果的にコスト増につながることがあります。
②樹脂系(レジン)素材の価格目安
光造形用のレジンは、1Lあたり4,000〜8,000円が主流です。高強度レジンや耐熱レジンは1万円を超える場合もあります。標準レジンは扱いやすくコストも比較的低いため、意匠試作や模型制作に適しています。レジンは消費量が多くなる傾向があるため、価格よりも硬化精度と安定性を優先して選ぶとよい結果を得られます。造形後の洗浄や硬化工程も考慮に入れ、総合的なコストで判断することがポイントです。
③金属素材の価格帯とコストの考え方
金属粉末を使用する3Dプリントは、他の素材と比べて桁違いにコストが高くなります。ステンレス粉末は1kgあたり10万円前後、チタンやアルミニウム合金では20万円を超えることもあります。さらに、造形装置や後処理設備のコストを含めると、1個あたりの製作単価は従来加工より高くなる場合があります。ただし、軽量化や一体成形による部品削減、設計自由度の高さといった付加価値を考慮すると、トータルコストでの優位性を発揮します。
④コストを抑える素材選びのコツ
コストを抑えたい場合は、まず用途に対して必要な強度・耐久性を明確にすることが重要です。意匠確認用であればPLAや標準レジン、機能評価用ならABSやPETGを選ぶのが効率的です。金属が必要な場合でも、複雑な部位だけを金属で出力し、他の部分は樹脂で造形するハイブリッド手法を検討するとコストを最適化できます。また、まとめて造形する際に部品間の距離を調整することで、サポート材の消費を減らし、結果的に材料費を削減できます。
【素材選びで失敗しないための注意点】
①素材とプリンター方式の相性を確認
素材ごとに適した造形方式があり、方式と素材が一致していないとトラブルの原因になります。FDM方式ではフィラメント径のばらつきや温度設定ミスが不具合を招き、光造形では露光時間の調整が不足すると硬化ムラが発生します。事前にプリンターの対応素材を確認し、推奨設定を守ることが再現性の向上につながります。
②湿気・温度など保管環境への注意
樹脂系やナイロン系の素材は湿気を吸収しやすく、吸湿すると糸引きや層割れの原因になります。密閉容器や乾燥剤を併用して保管し、長期使用しない場合は真空パックに戻すのが理想的です。レジンは紫外線で硬化が進むため、遮光ボトルに保管し、直射日光を避ける必要があります。こうした管理を怠ると、わずかな環境変化でも品質が不安定になります。
③仕上げ・後加工を考慮した素材選び
素材によって後加工のしやすさが異なります。PLAは研磨と塗装が容易ですが、ABSはアセトン処理で表面を滑らかにできます。金属素材はサンドブラストや機械研磨による仕上げが必要です。最終用途で塗装や組み立てを行う場合、接着剤や塗料との相性も確認しましょう。後工程を見据えた素材選定は、最終的な完成度と生産効率を大きく左右します。
【まとめ|3Dプリンター素材を理解して理想の造形を実現しよう】
自分の目的と素材の特性をマッチさせよう
3Dプリンターでの造形品質は、データ精度だけでなく素材の理解度にも大きく依存します。強度を重視するのか、外観を重視するのか、コストを抑えるのかを明確にし、それに応じて素材を選ぶことで失敗を減らせます。造形後の用途までを想定し、必要十分な性能を持つ素材を選択することが、効率的で満足度の高い製作プロセスにつながります。
素材の知識が作品の完成度を大きく左右する
素材の種類と特徴を理解すれば、同じ3Dデータでも造形結果の幅が大きく広がります。適切な素材を選ぶことで、反りやひび割れなどのトラブルを減らし、表面品質や強度の安定性が向上します。3Dプリントは、単なる造形技術ではなく、素材理解によって創造の自由度を広げるツールです。この記事で得た知識を活かし、理想の作品や製品づくりにぜひ役立ててください。
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