- 「ラフトとブリムは何が違う?」
- 「反りを防ぐには、どちらを使えばよい?」
と迷う方は多いのではないでしょうか。初層がベッドに安定して定着しないと、角が浮いたり、途中で造形物が剥がれたりする原因になります。
結論から言うと、ラフトはモデルの下に土台を作る機能、ブリムはモデルの周囲に薄い補助部分を広げる機能です。この記事では、両者とスカートの違い、使い分け5選、反り対策、主要スライサーで確認したい設定を初心者向けに解説します。
【この記事の結論】
ラフトとブリムは、どちらもFDM/FFF方式の3Dプリンターで初層の定着を補助するために使われますが、仕組みは異なります。ラフトは造形物の下全体に別の土台を作り、その上にモデルを造形します。ブリムはモデルの外周に1層程度の薄い領域を広げ、ベッドとの接地面積を増やします。
反りや底面の小ささが気になる場合は、まずブリムで改善するか確認し、それでも安定しない場合にラフトを検討すると、材料や造形時間を抑えやすくなります。
【ラフトとブリムの基本的な違いとは】
ラフトとブリムの最大の違いは、モデルの下に土台を作るか、モデルの周囲だけを広げるかです。
| 項目 | ラフト | ブリム |
|---|---|---|
| 形状 | モデルの下に複数層の土台を作る | モデル外周に薄い補助部分を広げる |
| モデルとベッド | ラフトを介して接する | モデル本体が直接ベッドに接する |
| 主な目的 | 初層の安定性を高める | 接地面積を増やして浮きや剥がれを抑える |
| 材料消費 | 多くなりやすい | 比較的少ない |
| 造形時間 | 増えやすい | 増加は比較的小さい |
| 底面 | ラフトの跡が残る場合がある | ベッド面の状態を反映しやすい |
| 後処理 | ラフト全体を剥がす | 周囲のブリムを取り除く |
| 向いている場面 | 安定性を優先したい造形 | 小さい接地面や角の浮きを補助したい造形 |
①ラフトとは何か
比較表だけで判断すると迷う場合は、「モデル本体をベッドから一度切り離して土台の上に載せたいか」で考えると分かりやすくなります。ラフトは補助構造そのものがベッドに接し、その上から本体を造形するため、ブリムよりも大がかりな定着補助です。
ラフトとは、造形物とビルドプレートの間に作る取り外し可能な土台です。最初にラフトを数層造形し、その上にモデル本体を積層します。モデル本体がベッドに直接触れないため、土台を設けて造形を安定させたい場合に利用されます。
一方、ラフトはフィラメントと造形時間が増えます。モデルとの距離が狭すぎると剥がしにくく、広すぎると底面が荒れやすいため、必要な場合に選ぶ補助手段として考えます。
②ブリムとは何か
ブリムは「モデル本体はベッドへ直接造形したいが、接地面積だけ増やしたい」ときに使いやすい方法です。ラフトほど造形条件を変えずに追加できるため、軽い反りや接地面不足への最初の対策として試しやすい特徴があります。
ブリムは、モデルの初層から外側へ薄い領域を広げる機能です。モデルの周囲に「つば」を付けるイメージで、ベッドに接する面積を増やします。
背が高く底面が小さい形状、細い足や柱、角が浮きやすい形状で有効です。材料消費や造形時間を比較的抑えられる一方、広くしすぎると除去に手間がかかります。
③スカートとの違い
スカートは、モデルから少し離れた位置に外周線を描く機能です。ブリムと形が似ていますが、通常はモデルと接続しません。
主な目的は、造形開始前にフィラメントの吐出を安定させたり、初層を確認したりすることです。モデルと接続しないため、反り対策が必要な場合はブリムやラフトを検討します。
【ラフトを使うべきケースと特徴】
①ベッドへの定着が安定しない場合
第一層が部分的に浮く、モデルの一部がベッドに定着しないといった問題が続く場合、ラフトが選択肢になります。モデル本体ではなく、まずラフトをベッドへ定着させるため、本体の初層を直接ベッドへ載せる場合とは異なる条件で造形できます。
ただし、ラフトを使う前に、ベッドの汚れ、ノズル高さ、レベリング、初層速度、ベッド温度を確認します。調整が不十分なら、ラフト自体が剥がれることもあります。
②大型モデルや反りが気になる場合
底面が広い大型モデルは、造形中の温度変化や素材の収縮によって角が持ち上がることがあります。ラフトはモデルの下に広い土台を設けるため、こうした造形で安定性を補いたい場合に利用できます。
ただし、大型でもブリムだけで安定する場合は、材料や時間を抑えられます。
③底面の仕上がりより成功率を優先したい場合
ラフトを使うと、モデルの底面にはラフトとの接触跡が残る場合があります。そのため、底面の外観や寸法を重視する部品よりも、底面が見えないパーツ、後加工を予定している試作品、まず形状確認を優先したい造形に向いています。
底面の見た目より造形の安定を優先する場面では、ラフトが候補になります。
【ブリムを使うべきケースと特徴】
①底面が小さい・細いモデル
背が高いのに足元が細いモデルや、複数の小さなパーツを同時に造形する場合は、ブリムが有効です。外周に補助部分を広げることで、モデル単体よりも大きな面積でベッドへ定着できます。
底面が小さい背の高いモデルや、複数の小さなモデルではブリムが有効です。
②角の浮きや軽い反りを抑えたい場合
モデルの中央は定着しているのに角だけが浮く場合は、ブリムを追加することで改善できることがあります。モデル外周がベッドへつながるため、角が上方向へ持ち上がるのを抑えやすくなります。
まずブリム幅を調整すると、材料消費や後処理を抑えながら対策できます。
③底面の仕上がりを保ちたい場合
ブリムはモデル本体が直接ベッドに接するため、底面の見た目を重視しつつ外周の定着を補助したい場合に向いています。
ただし、接続部分に除去跡が残ることがあるため、外観が重要なモデルではブリム幅や分離間隔も確認します。
【ラフト・ブリム・スカートの使い分け5選】
①大型モデルは「ブリム→必要ならラフト」
大型モデルだからといって、最初からラフトが必要とは限りません。ベッドへの定着が安定している場合は、まずブリムで角の浮きを補助し、それでも反りや剥がれが改善しない場合にラフトを検討すると効率的です。
必要な補助を段階的に強くすると、無駄を抑えやすくなります。
②底面が小さいモデルはブリム
細い脚、柱、ピン形状など、ベッドに触れる面積が小さいモデルはブリムが向いています。接地面積を増やしながら、モデル本体は直接ベッドへ造形できるためです。
複数の小型部品をまとめて造形する場合にも、ブリムは安定性を補いやすい方法です。
③反りやすい素材は素材特性とメーカー推奨値を優先
ABS、ASA、PA、PPなどは、PLAより反りへの対策が必要になることがあります。ただし、必要な対策はフィラメントの配合やメーカー、プリンター環境によって異なります。
ブリムやラフトだけに頼らず、フィラメントメーカーが指定するノズル温度・ベッド温度・造形環境を確認することが重要です。
④底面をきれいにしたいモデルはブリム
フィギュアの台座や外観部品など、モデル底面の仕上がりを重視する場合はブリムが候補になります。ラフトを介さずベッドへ直接造形できるため、ベッド表面の状態を底面へ反映しやすいからです。
ただし、初層を押し付けすぎると底部が広がる場合があるため、初層高さの調整も必要です。
⑤定着補助が不要ならスカート
ベッドへの定着が安定していて、モデルの接地面積も十分にある場合は、ラフトやブリムを追加する必要はありません。スカートでフィラメントの吐出状態と初層を確認して、そのままモデルを造形できます。
ラフトやブリムは、必要なときだけ使うことが効率化につながります。
【反りを防ぐための設定ポイントと注意点】
①ラフトやブリムより先に初層を確認する
反りや剥がれが起きたとき、すぐにラフトやブリムを追加するのではなく、まず初層の状態を確認します。ノズルとベッドの距離が適切でなければ、フィラメントが十分に押し付けられなかったり、反対に押し付けすぎたりします。
自動レベリング搭載機でも、プレートの状態やZオフセットを確認し、メーカーのキャリブレーション方法を優先します。
②ベッド表面を清潔にする
ビルドプレートに皮脂や汚れが付着すると、フィラメントが定着しにくくなります。清掃方法はプレートの材質によって異なるため、メーカーの取扱説明書に従います。
ラフトやブリムを広げても、そもそもプレートへの定着力が不足していれば補助構造ごと剥がれる可能性があります。「ブリムをもっと広くする」「ラフトを厚くする」前に、ベッド表面が適切な状態かを確認することが重要です。
まずベッド清掃、初層高さ、温度設定を確認します。
③温度はフィラメントメーカーの推奨値を基準にする
ノズル温度やベッド温度は、「PLAなら何度」「ABSなら何度」と一律に決めるのではなく、使用するフィラメントの推奨範囲を基準にします。同じ材質名でも配合によって適正温度が異なるためです。
反りが出る場合は、冷却設定や室温、外気の影響も合わせて確認します。
④風や急激な温度変化を避ける
反りやすい素材では、エアコンや扇風機などの風が直接当たる環境を避けます。造形物の一部だけが急激に冷えると、収縮差によって反りにつながる可能性があります。
冷却ファンの適切な設定も素材によって異なるため、使用素材の推奨条件を確認してください。
【スライサー別のラフト・ブリム設定ガイド】
スライサーによって名称や設定項目は異なり、アップデートによって表示位置が変更されることもあります。ここでは数値を固定するのではなく、どの項目を確認すべきかを押さえます。
①Creality Print
Creality Printでは、ビルドプレートへの定着に関する設定からラフトやブリムを選択します。確認したいのは、ブリムの幅や間隔、ラフトの層構成やモデルとの距離などです。
Creality Printは更新により項目名や配置が変わる場合があるため、使用中のバージョンで定着関連の項目を確認してください。
②Bambu Studio
Bambu Studioでも、ブリムの種類や幅、モデルとの間隔などを調整できます。自動設定で問題なく造形できる場合は、むやみに数値を変更せず、反りや剥がれが出たときに必要な項目だけを調整する方が再現性を保ちやすくなります。
ラフトを使用する場合は、モデルとの距離が剥がしやすさと底面品質に影響します。変更後はスライスプレビューで土台の形状を確認してから造形します。
③Cura・PrusaSlicer
Curaではビルドプレート定着方法として、スカート、ブリム、ラフトなどを使い分けられます。PrusaSlicerでは「Skirt and brim」からブリム幅や分離用の間隔などを設定できます。
Prusaの公式ガイドでは、ブリムによる接地面積の増加を説明し、一般的な目安として3mm以上のブリムを案内しています。ただし、これはすべてのモデルに共通する絶対値ではありません。モデルの大きさや素材に合わせて調整してください。
【迷わず選べる!初心者向けの判断フロー】
①まず補助なしで安定するか確認する
モデルの底面が十分に広く、普段からベッドへの定着が安定している場合は、まずスカートまたは補助なしで造形できます。問題がなければ、ラフトやブリムを追加する必要はありません。
②角が浮く・底面が小さいならブリム
モデル本体は定着しているものの角が浮く場合や、細い脚など接地面積が不足している場合はブリムを検討します。ブリムは比較的少ない材料で定着を補助できるため、最初に試しやすい方法です。
③ブリムでも安定しない場合は原因を確認してラフトを検討
ブリムを広げても剥がれる場合は、ベッドの汚れ、初層高さ、温度、素材、造形環境を確認します。それらを調整しても安定しない場合や、土台そのものを設けたい場合にラフトを検討します。
逆に、ブリムで問題なく造形できた場合は、ラフトへ変更する必要はありません。定着補助は強ければ強いほどよいわけではなく、造形時間、材料消費、後処理、底面品質とのバランスで選ぶことが大切です。
「スカートまたは補助なし→ブリム→ラフト」の順に必要性を確認すると、材料や造形時間を増やしすぎずに対策できます。
【まとめ】
ラフトとブリムの違いは、ラフトがモデルの下に別の土台を作るのに対し、ブリムはモデルの外周に薄い補助部分を広げることです。ラフトは安定性を補いたい場合、ブリムは材料や時間を抑えながら接地面積を増やしたい場合に向いています。
一方、スカートは主にフィラメントの吐出や初層の確認に使うため、ブリムとは目的が異なります。
反りや剥がれが発生したときは、ラフトやブリムだけで解決しようとせず、ベッドの清掃、初層高さ、温度、冷却、素材の推奨条件を確認することが重要です。まず補助なしまたはスカートで安定するかを確認し、必要に応じてブリム、さらにラフトへと対策を強めると、材料と造形時間を抑えながら安定した3Dプリントにつなげられます。
【FAQ】
①ラフトとブリムはどちらを使えばよいですか?
接地面積を少し増やせば安定するモデルではブリムが使いやすく、ブリムでは十分に安定しない場合や、モデルの下に土台を設けたい場合はラフトが候補です。モデルの大きさだけで決めず、素材や初層の状態も合わせて判断します。
②ラフトを使うと底面が荒れるのはなぜですか?
ラフトではモデルを土台の上に造形するため、モデルとラフトの接触部分が底面に残ることがあります。モデルとの距離を狭くすると定着しやすい一方で剥がしにくくなり、広くすると底面が荒れやすくなるため、バランスの調整が必要です。
③ブリムを使っても反る場合はどうすればよいですか?
まずブリム幅を見直したうえで、ベッドの清掃、初層高さ、ベッド温度、冷却設定、外気の影響を確認します。それでも改善しない場合は、ラフトや造形環境の見直しを検討します。
④スカートは反り防止になりますか?
通常のスカートはモデルと接続していないため、ブリムのように接地面積を増やす機能ではありません。主にフィラメントの吐出を安定させたり、初層の状態を確認したりする目的で使用します。
⑤PLAでもラフトは必要ですか?
PLAでも、モデル形状やベッドへの定着状態によってはラフトを使う場合があります。ただし、安定して造形できている場合に常時ラフトを使用する必要はありません。まずブリムや初層設定の調整で改善できるか確認します。
⑥ブリムの幅はどれくらいにすればよいですか?
必要な幅はモデルの大きさや形状、素材によって異なります。PrusaSlicerの公式ガイドでは一般的な目安として3mm以上が案内されていますが、反りが強い場合はさらに広くする場合もあります。標準設定から始め、造形結果を見ながら調整するのが基本です。