- 「金属3Dプリンターとは、普通の3Dプリンターと何が違うの?」
- 「価格はどれくらいするの?」
- 「造形した部品の強度は実用に耐えられるの?」
と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
金属3Dプリンターは、金属材料から立体物を作れる技術ですが、樹脂3Dプリンターとは設備や材料、後処理、費用が大きく異なります。
結論から言うと、金属3Dプリンターは複雑形状や小ロット、部品の一体化などに強みがある一方、すべての金属部品に適した加工方法ではありません。価格や強度だけで判断せず、用途や数量、必要な精度から方式を選ぶことが重要です。
この記事では、金属3Dプリンターとは何かを初心者向けに解説し、仕組み・価格・強度・個人利用・活用例という5つの基本を中心に、導入と外注の判断基準まで紹介します。
【金属3Dプリンターとは?基本の仕組みをわかりやすく解説】
①金属材料を積み重ねて立体物を作る技術
金属3Dプリンターとは、金属粉末や金属ワイヤーなどを使い、材料を層状に積み上げて立体的な金属部品を作る装置です。「金属AM(Additive Manufacturing)」や「金属積層造形」と呼ばれることもあります。
切削加工が金属材料を削って形を作るのに対し、3Dプリントは必要な部分に材料を加えていく点が大きな違いです。そのため、工具が届きにくい内部流路や、中空構造、複数部品を一体化した形状などにも対応しやすくなります。三菱電機も、金属AMを金属材料を溶融・焼結しながら層を積み重ねる造形技術として解説しています。
ただし、金属であれば何でも自由に造形できるわけではありません。対応材料や精度、造形サイズは装置や方式によって異なります。
②樹脂3Dプリンターとの違い
樹脂3Dプリンターとの主な違いは、材料だけでなく設備、後処理、運用コストにもあります。
樹脂3Dプリンターは、フィラメントや液体レジンなどを使い、模型、治具、試作品、フィギュアなど幅広い用途で利用されています。一方、金属3Dプリンターは高温で金属を溶融したり、造形後に焼結したりするため、材料管理や安全設備、後処理まで含めた運用が必要です。
そのため、金属3Dプリンターは「樹脂3Dプリンターの材料を金属に置き換えただけの装置」ではありません。強度や耐熱性などが必要な機械部品を作る場合に候補となる、より専門性の高い製造設備と考えるとわかりやすいでしょう。
③代表的な造形方式の種類
金属3Dプリンターには複数の方式があります。代表的なのが、PBF、DED、Binder Jettingです。
金属粉末を熱源で溶融するPBF方式
PBF(Powder Bed Fusion)は、金属粉末を薄く敷き、レーザーや電子ビームなどを必要な部分に照射して造形する方式です。複雑で精密な形状を作りやすく、金属AMを代表する方式のひとつです。
結合剤を使うBinder Jetting方式
Binder Jettingは、金属粉末に結合剤を噴射して形を作り、その後に脱脂・焼結などを行う方式です。造形工程と金属としての性質を得る工程が分かれている点が特徴です。リコーも、粉末を結合剤で1層ずつ固める方式として紹介しています。
材料を供給しながら積層するDED方式
DED(Directed Energy Deposition)は、金属粉末やワイヤーを供給しながらレーザーなどで溶融し、材料を堆積させる方式です。大型部品や既存部品への追加造形、補修などに利用できます。
【金属3Dプリンターの価格はどれくらい?導入費用と外注費の目安】
①本体価格だけでは判断できない
金属3Dプリンターは、一般的な樹脂3Dプリンターより高額になりやすい設備です。ただし、価格は方式、メーカー、造形サイズ、性能によって大きく異なるため、「金属3Dプリンターは○円」と一括りにはできません。
公開されている製品の一例では、リコーが掲載する金属Binder Jettingシステム「Shop System」は3,000万円以上と案内されています。ただし、これは特定の産業用製品の価格帯であり、金属3Dプリンター全体の相場を示すものではありません。
また、本体以外にも材料、保守、設置環境、安全設備、後処理設備などが必要です。したがって、自社導入では本体価格ではなく、運用まで含めた総コストで判断する必要があります。
②外注なら設備を購入せず利用できる
使用頻度が低い場合や試作段階では、金属3Dプリントサービスを利用する方法があります。
外注価格は、材料、サイズ、造形体積、形状、数量、造形方式、後処理などによって変わります。サポート除去、熱処理、研磨、切削仕上げなどが追加されれば、その分費用も増えます。
そのため、価格を比較するときは「造形1点の金額」だけではなく、実際に使える状態まで仕上げた総額を確認することが重要です。
【金属3Dプリンターの強度は実用に耐えられる?】
①金属3Dプリントだから弱いとは限らない
金属3Dプリンターで作った部品は実用品にも利用されていますが、強度は材料名だけでは決まりません。
同じ金属でも、造形方式、造形条件、造形方向、内部欠陥、熱処理などによって機械的性質が変わります。NISTの研究でも、金属AMでは造形方向による異方性や、残留応力、後処理が機械的性質に影響することが示されています。
そのため、「切削加工品より強い」「3Dプリントだから弱い」と単純に比較するのは適切ではありません。
| 強度に関係する項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 材料 | ステンレス、アルミ、チタンなど |
| 造形方式 | PBF、DED、Binder Jettingなど |
| 造形方向 | 荷重がかかる方向との関係 |
| 後処理 | 熱処理、焼結など |
| 表面状態 | 粗さや仕上げの有無 |
| 使用条件 | 荷重、温度、繰り返し使用など |
実際に力がかかる部品や安全性が求められる部品では、メーカーや造形サービスが公開する材料データを確認し、必要に応じて試験や検査を行うことが重要です。
②後処理も完成品質に影響する
金属3Dプリントでは、造形後に熱処理、焼結、サポート除去、研磨、切削加工などを行う場合があります。
たとえばPBFでは、造形時の熱によって残留応力が生じることがあり、用途によって熱処理が必要です。NISTも、AM鋼材では気孔や残留応力などとともに、造形後の熱処理が重要であることを示しています。
「3Dプリンターから取り出した状態=完成品」と考えず、造形から後処理までをひとつの製造工程として考える必要があります。
【金属3Dプリンターは個人でも使える?家庭用との違い】
①家庭への本格導入はハードルが高い
個人でも金属3Dプリントを利用できますが、産業用の金属3Dプリンターを一般家庭に導入するのは現実的ではないケースが多いです。
金属粉末を扱う装置では材料管理や安全対策が必要になり、造形方式によっては高温工程や後処理設備も必要です。
一方、金属粉末を含むフィラメントを材料押出方式で成形し、その後に脱脂・焼結する方法もあります。ただし、この場合も造形しただけでは最終的な金属部品にならず、後工程が必要です。
そのため、個人で数点だけ製作したい場合は、自宅に装置を導入するより金属3Dプリントサービスへ依頼する方が検討しやすいでしょう。
【金属3Dプリンターの活用例5選】
①試作品の製作
3Dデータから直接造形できるため、複雑な金属部品の試作に利用できます。金属としての重量感や熱特性などを含めて確認したい場合にも選択肢になります。
②治具や工具の製作
少量しか必要のない専用治具や工具にも活用できます。形状を作業対象に合わせたり、複数部品を一体化したりできることがメリットです。
③自動車・航空宇宙分野の部品
内部構造の最適化や部品一体化など、積層造形の自由度を活かした部品に利用されています。金属AMは自動車、航空、発電、医療など幅広い製造分野で活用されています。
④医療分野の部品
金属AMは医療用途でも利用されており、患者ごとの形状に合わせた部品など、カスタム性を活かせる分野があります。ただし、医療用途では規制や品質管理への対応が必要です。
⑤金型や内部流路を持つ部品
切削工具が届きにくい内部流路などは、金属3Dプリンターの特徴を活かしやすい形状です。複雑形状そのものに価値がある部品ほど、従来加工との差が出やすくなります。
【金属3Dプリンターを利用する前に確認したい注意点】
①寸法精度や表面仕上げを確認する
金属3Dプリンターでも、造形したままで切削加工と同等の寸法精度や表面状態になるとは限りません。
はめ合い部分、ネジ穴、摺動面、密閉面などでは、造形後に切削や研磨が必要になる場合があります。必要な精度を最初に決めてから、造形と後加工を組み合わせることが重要です。
②材料や造形サイズには制限がある
対応できる金属材料や最大造形サイズは、装置によって異なります。また、薄すぎる壁や細すぎる形状など、3Dデータ上では作れても実際には安定して造形できない形状があります。
依頼前には、材料、完成サイズ、最小肉厚、必要精度などを造形会社へ確認すると安心です。
③量産なら従来加工が有利な場合もある
金属3Dプリンターは万能ではありません。
| 金属3Dプリントを検討しやすい | 従来加工も検討したい |
|---|---|
| 複雑な内部構造 | 単純な形状 |
| 試作・少量生産 | 同形状の大量生産 |
| 部品の一体化 | 加工しやすい一般部品 |
| カスタム形状 | 規格品で代替できるもの |
| 金型を使わない少量製作 | 大量生産で単価を下げたい場合 |
重要なのは「新しい技術だから使う」のではなく、その部品に金属3Dプリントを使う理由があるかを確認することです。
【金属3Dプリンターは導入と外注のどちらが現実的?】
継続的に金属AMを使用し、専門人材や安全設備、後処理環境まで整えられる企業であれば、自社導入を検討できます。一方、単発の試作や少量生産では、外注サービスの方が設備投資を抑えやすくなります。
判断するときは、目的・数量・材料・強度・精度・納期・予算を整理してください。「年間で何回使うかわからない」という段階なら、まず外注で品質と費用を確認してから導入可否を判断する方法もあります。
また、3Dプリントは金属を選べばよいとは限りません。TREND 3Dで扱っているようなフルカラー樹脂造形は、人物フィギュアやキャラクター、展示模型など、色や外観の再現を重視する用途に向いています。一方、機械的強度や耐熱性が重要な部品では金属造形が候補になります。
つまり、材料を先に決めるのではなく、「完成品に何を求めるのか」から造形方式を選ぶことが重要です。
【金属3Dプリンターとは何かを理解して用途に合う方法を選ぼう】
金属3Dプリンターとは、金属粉末やワイヤーなどを使い、材料を積層して金属部品を作る技術です。PBF、DED、Binder Jettingなど複数の方式があり、価格、精度、強度、得意な形状も異なります。
特に、複雑形状、小ロット、部品一体化、内部流路、カスタム部品では金属3Dプリントの特徴を活かしやすくなります。一方、単純形状の大量生産では、切削、鋳造、プレスなど従来加工の方が適している場合があります。
金属3Dプリンターを検討するときは、本体価格や「金属だから強い」というイメージだけで判断せず、用途、必要な性能、数量、後処理まで含めて比較しましょう。初めて利用する場合は、外注サービスで実際の品質と費用を確認してから次の判断に進む方法も有効です。