「3Dプリンターを始めたけれど、積層ピッチや中空構造、サポート材など専門用語が難しくてつまずいてしまう…」
「用語の意味が理解できず、設定や操作に自信が持てない…」
と感じていませんか。
多くの初心者が同じ悩みに直面しています。
そんな疑問にお答えします。
結論から言うと、3Dプリンターの基本用語を体系的に理解するだけで、造形精度が安定し、スライサー設定に迷う時間が大幅に減り、トラブルも未然に防げます。
この記事では、積層ピッチ・中空サポート・ノズル径・積層痕・データ形式など、初心者がまず覚えておきたい40の用語をわかりやすく整理。
用語の役割や使われる場面まで丁寧に解説し、「ただの辞書」ではなく“実践で使える知識”として理解できるよう構成しています。
【3Dプリンター基礎用語(8語)】
① 3Dプリンターとは
3Dプリンターは、デジタルデータをもとに樹脂やフィラメントなどの材料を少しずつ積み重ねて立体物を造形する機械です。従来の削り出し加工とは異なり、「必要な部分にだけ材料を置いていく」積み上げ型のものづくりであることが大きな特徴です。
造形(Printing)の意味
ここでいう造形(Printing)とは、紙にインクを乗せる印刷とは違い、材料を層状に配置しながら立体物を作り上げていくプロセスを指します。スライサーソフトで生成したG-codeに従い、ノズルや光源が動いて材料を硬化・積層していく一連の流れが造形です。
積層(Layer)の仕組み
積層(Layer)は、3Dプリンターの根幹となる考え方です。モデルを薄い層にスライスし、その層を下から順番に積み重ねていきます。各層の厚みは後述する積層ピッチで決まり、層が薄いほど表面は滑らかになり、逆に厚いほど造形は速くなります。
② フィラメント
フィラメントは、FDM方式の3Dプリンターで使用する糸状の樹脂材料です。リールに巻かれた状態で供給され、ノズル内部で加熱されて溶け、ベッド上に押し出されて積層されます。
代表的な素材の種類
代表的なフィラメントには、扱いやすいPLA、耐熱性と強度に優れたABS、柔軟性のあるTPUなどがあります。素材ごとに適切な温度や反りやすさが異なるため、特徴を理解しておくと造形の失敗を減らせます。
初心者向けフィラメントの選び方
初心者には、反りが少なく臭いも比較的少ないPLAフィラメントが適しています。低めの温度で安定して造形できるため、初めての1台で基本的な動作確認や設定調整を行う際に便利です。
③ レジン(光硬化樹脂)
レジンは、光造形方式(SLA・DLP・MSLA・LCD方式)の3Dプリンターで使用する液体状の光硬化樹脂です。特定の波長の光を当てると硬化する性質があり、タンク内のレジンに光を照射して層ごとに固めていきます。
レジン特有の造形特性
レジンは、非常に細かいディテールを再現できる点が大きな利点です。積層痕が目立ちにくく、ミニチュアやフィギュア、歯科模型など、高精細な造形に適しています。一方で、硬化後もやや脆い性質を持つものも多く、用途に応じたレジン選びが重要です。
安全面で注意すべきポイント
レジンは未硬化の状態だと皮膚刺激や臭気があるため、手袋やマスク、換気などの安全対策が必要です。また、造形後の洗浄や二次硬化も工程として必須であり、廃液の処理方法も含めて安全に配慮する必要があります。
④ ベッド(造形プレート)
ベッド(造形プレート)は、造形物が積み重なっていく土台となる部分です。ガラス、金属、PEIプレートなどさまざまな素材があり、材料の定着性や反りの出やすさに影響します。
定着(密着)に影響する要素
ベッドの温度、表面の清潔さ、表面コーティングの有無などが、造形物の**定着(密着)**に直結します。定着が弱いと、反りや剥がれが発生しやすく、造形の途中で失敗につながるため、ベッド周りの環境を整えることは非常に重要です。
⑤ ノズル
ノズルは、加熱されたフィラメントが押し出される出口部分です。直径や材質によって、造形の精度やスピード、使用できるフィラメントの種類が変わります。
ノズルの形状と役割
ノズル先端はわずかにすぼまった形状になっており、一定の太さでフィラメントを押し出す役割があります。ノズル径が小さいほど細かい造形が可能になりますが詰まりやすくなり、大きいほど高速に造形できますが細部の表現は苦手になります。
⑥ エクストルーダー
エクストルーダーは、フィラメントをノズルへ押し出す機構の総称です。モーターとギアでフィラメントを掴み、一定の量を送り出すことで安定した造形を実現します。
ダイレクト式とボーデン式の違い
エクストルーダーには、ノズルの近くに配置するダイレクト式と、本体側に配置してチューブを通して送るボーデン式があります。ダイレクト式は柔らかいフィラメントに強く、ボーデン式は軽量なヘッドで高速造形しやすいという違いがあります。
【スライサー設定の重要用語(12語)】
① 積層ピッチ
積層ピッチとは、1層あたりの高さ(厚み)を示す数値です。一般的には、0.1〜0.3mm程度の範囲で設定され、数値が小さいほど細かく積み重ねることになります。
最小積層ピッチと仕上がりの関係
積層ピッチを小さく設定すると、層の段差が目立ちにくくなり、表面が滑らかで高精細な仕上がりになります。ただし、その分だけ層の数が増えるため、造形時間は長くなります。プリンターの性能やノズル径によって設定できる最小ピッチが変わるため、マシンの仕様も合わせて確認する必要があります。
用途別の推奨積層ピッチ
見た目を重視するフィギュアやディスプレイ用の造形では、0.1〜0.16mm程度の細かい積層ピッチが適しています。一方で、試作品や強度重視の部品、形状確認用のモデルなどでは、0.2〜0.28mm程度の積層ピッチに設定すると、時間を短縮しつつ十分な品質を確保できます。
② インフィル(充填率)
インフィル(充填率)は、モデル内部の密度をパーセントで指定する設定です。外からは見えない部分ですが、強度や重量に大きく影響します。
強度と軽量化のバランス
充填率を高くすると内部が詰まり、強度は上がりますが材料と時間が多く必要になります。反対に充填率を低くすると軽くて省材料になりますが、衝撃や荷重に弱くなります。用途に応じて、装飾用なら10〜20%、実用部品なら30〜50%程度を目安に設定するとバランスが取りやすくなります。
③ 中空構造(Hollow)
中空構造(Hollow)とは、モデル内部をほぼ空洞にする設計やスライサーの設定を指します。レジン造形では特に一般的な考え方です。
中空化するときの注意点
モデルを中空にすることで材料を節約し、重量を軽くできますが、内部にレジンや樹脂が閉じ込められると硬化不良や変形の原因になります。そのため、排出口となる穴を設けることが重要です。さらに、薄すぎる外壁は強度不足になるため、外壁の厚み設定にも注意が必要です。
④ サポート材
サポート材は、宙に浮いた部分や角度のきつい部分を支えるために一時的に生成される支えの構造です。
サポートの種類と使い分け
サポートには、接触面積の少ないタイプや、取り外しやすさを重視したタイプなどがあります。スライサーの設定で密度や接触距離を調整することで、造形の安定性と除去のしやすさを両立できます。
⑤ ラフト
ラフトは、モデルの下に敷く薄い土台のような層のことです。ベッドとの間に緩衝層を作るイメージで、モデルとは別のベースを先に造形します。
ベッド密着を高める仕組み
ラフトを使用すると接地面積が増え、ベッドとの密着性が向上します。その結果、反りや剥がれを抑えられます。特に接地面が小さいモデルや、反りやすい素材を使用する際に有効です。
⑥ ブリム
ブリムは、モデルの輪郭から外側に広がる薄いリング状の層です。ラフトほど厚くはなく、モデルの周囲にだけ付く補助要素です。
反り防止に有効な理由
ブリムはモデルの周りの面積を広げることで、ベッドに対する接着面積を増やし、反りを抑える効果があります。ラフトよりも除去が簡単なため、まず試してみるべき反り対策といえます。
⑦ ノズル径
ノズル径は、ノズルの先端から押し出されるフィラメントの太さを決める重要なパラメーターです。
精度と造形スピードの関係
ノズル径が小さいほど細かい線を引けるため、文字や細いディテールに強くなりますが、造形には時間がかかります。大きなノズル径は太い線を一度に出せるため造形時間を短縮できますが、細部の再現性は下がります。精度重視かスピード重視かを考えて選択することが大切です。
⑧ 造形速度(Print Speed)
造形速度(Print Speed)は、ノズルが移動しながらフィラメントを押し出すスピードを指します。
遅い/速い設定で起きるトラブル
速度が速すぎると、フィラメントの供給が追いつかず線が細くなったり、積層が乱れたりします。逆に遅すぎると、材料が過度に溶けてダレたり、時間が極端に長くなったりします。プリンターや素材に合わせ、適切な範囲に調整することが重要です。
⑨ リトラクション
リトラクションは、移動中の糸引きを防ぐためにフィラメントを一時的に引き戻す機能です。
糸引き(Stringing)対策の基礎
リトラクション量やリトラクション速度の設定を最適化することで、糸引き(Stringing)を大幅に減らすことができます。多すぎると詰まりやすくなり、少なすぎると糸引きが残るため、テスト造形を通じて最適値を探る作業が有効です。
⑩ ベッドレベリング
ベッドレベリングは、ノズルとベッドの隙間を均一にする調整作業です。
自動と手動の違い
自動ベッドレベリング機能があるプリンターでは、センサーがベッドの高さを測定し、ノズルとの距離を補正します。手動の場合はネジやダイヤルを回して高さを揃えます。どちらの場合も、最初のレイヤーの付き方に直結するため、きちんと調整しておくことが非常に重要です。
⑪ シェル(外壁数)
シェル(外壁数)は、モデルの外側の壁を何層にするかを決める設定です。
強度を上げる設定の考え方
外壁を増やすと、モデルの耐久性が向上し、割れにくくなります。特に、荷重がかかる部分や細いパーツが多いモデルでは、シェル数を増やすことで実用的な強度を確保できます。一方で材料と造形時間は増えるため、必要な強度とバランスを取りながら設定を行います。
⑫ ウォールライン
ウォールラインは、外壁を構成する1本1本のラインを指します。スライサーによってはウォールライン数として設定することもあります。
仕上がりに影響する理由
ウォールラインの本数や順番は、外観の滑らかさや強度に直結します。外側のウォールラインがしっかりと形成されることで、見た目の美しさと表面の一体感が生まれます。
【造形方式に関する用語(7語)】
① FDM(熱溶解積層)
FDM(熱溶解積層)は、フィラメントを加熱して溶かし、ノズルから押し出して積層していく方式です。家庭用3Dプリンターの多くが採用している方式です。
向いている造形ジャンル
FDMは、比較的大きめのモデルや、機械部品、治具、試作品などに向いています。材料価格が比較的安く、ランニングコストを抑えながら実用的な部品を作成できます。
② SLA(光造形)
SLA(光造形)は、液体レジンにレーザーを照射して硬化させる方式です。
高精度造形の理由
レーザー光を細く制御できるため、微細なディテールの再現が可能です。積層ピッチも非常に薄くできるため、滑らかで高精細なモデルを造形できます。フィギュア、装飾品、歯科模型などの用途に適しています。
③ DLP
DLPは、デジタルプロジェクターを用いて一層分のパターンをまとめて照射する光造形方式です。
光源の特徴と違い
SLAがレーザーで1点ずつ描くのに対し、DLPは一層全体をまとめて露光するため、造形速度が速いことが特徴です。光の当たり方が均一になりやすく、スピードと精度を両立しやすい方式です。
④ MSLA
MSLAは、マスク型SLAとも呼ばれる方式で、LCDパネルとLED光源を組み合わせて露光します。
液晶パネル方式のメリット
LCDパネルを通して光を遮る・通すを制御することで、DLPに近い一括露光を実現しています。プリンター本体の価格が比較的抑えられ、高精細な造形が可能なため、個人ユーザーにも普及している光造形方式です。
⑤ SLS(粉末焼結)
SLS(粉末焼結)は、ナイロンなどの粉末素材にレーザーを当てて焼結し、層ごとに固めていく方式です。
サポート不要の造形原理
周囲に未焼結の粉末が残るため、それ自体がサポートの役割を果たします。そのため、別途サポート材を生成する必要がなく、複雑な中空構造や入り組んだ形状も造形しやすい方式です。
⑥ FFF
FFFは、FDMとほぼ同じ意味を持つ用語で、フィラメントを溶かして積層する方式です。商標との関係から、FFFという名称が使われる場合もあります。
FDMとの名称の違い
機能的な違いはほとんどなく、呼び方が異なるだけです。どちらも熱溶解積層方式として理解しておけば十分です。
⑦ LCD方式
LCD方式は、MSLAとも重なる概念で、LCDパネルを使って露光パターンを制御する光造形方式です。
低価格帯レジンプリンターの特徴
LCD方式のレジンプリンターは、比較的低価格帯から導入でき、高精細な造形が可能です。趣味でのフィギュア制作や小ロットの試作に適しており、コストパフォーマンスに優れた光造形プリンターとして広く普及しています。
【データ形式・ソフト系用語(6語)】
① STL
STLは、3Dプリントに最もよく使われるファイル形式です。モデルを三角形の面の集合として表現します。
最も一般的な形式である理由
多くのスライサーや3Dプリンターが標準的にサポートしており、互換性が高いことが特徴です。色情報などは持たないものの、形状データのみを扱う用途には十分な形式です。
② OBJ
OBJは、形状に加えて色やテクスチャ座標などを扱えるファイル形式です。
STLとの違い
STLが三角形メッシュのみを扱うのに対し、OBJは材質や色の情報を別ファイル(MTL)と組み合わせて扱えます。フルカラー造形やビジュアル用途で使われることが多く、よりリッチな情報を持てる形式です。
③ 3MF
3MFは、STLの後継を意識して作られた新しい形式で、マイクロソフトなどが推進しています。
データ容量の小ささと利点
3MFは、テキストベースのSTLに比べてデータ容量が小さく、色情報や素材情報も一括で管理できる点が利点です。対応ソフトやプリンターが増えつつあり、今後利用が拡大していく形式です。
④ G-code
G-codeは、3Dプリンターに対して「どの座標に、どの速度で、どれだけ材料を出すか」を指示する命令データです。
3Dプリンターの動きを指示する仕組み
スライサーは、STLなどの形状データを解析し、それをG-codeとして書き出します。プリンターはそのG-codeを読み込み、モーターやエクストルーダー、温度などを制御します。造形品質の良し悪しは、G-codeの内容にも大きく左右されます。
⑤ スライサー
スライサーは、3Dモデルを層ごとのデータ(G-code)に変換するソフトウェアです。
代表的なスライサーソフト(Cura/Bambu Studioなど)
代表的なスライサーとして、Ultimaker Cura、PrusaSlicer、Bambu Studio などがあります。それぞれに得意分野や使い勝手があり、プリンターとの相性もあるため、自分の環境に合ったスライサーを選ぶことが大切です。
⑥ CAD(3Dモデリング)
CAD(3Dモデリング)は、3Dモデルを設計するためのソフトウェア全般を指します。
代表的なCADソフト(Blender/Tinkercad/Fusion 360など)
趣味用途ではBlenderやTinkercad、機械設計寄りではFusion 360などがよく使われます。3Dプリントは、スライサーだけでなくCADソフトとの組み合わせで活用の幅が大きく広がります。
【造形トラブル関連用語(7語)】
① 積層痕(Zリブ)
積層痕(Zリブ)は、表面に見える段差や筋のことです。積層ピッチや機械の精度、振動などが原因で目立つ場合があります。
積層痕が目立つ原因
積層ピッチが大きすぎる場合や、ベルトの緩み、フレームの剛性不足などが原因で、層ごとの位置がわずかにずれて積層痕として現れます。
改善するための基本設定
積層ピッチを小さくする、造形速度を適切に下げる、ベルトやフレームを点検するなどの対策によって、積層痕を軽減し、より滑らかな表面に近づけることができます。
② 反り(Warp)
反り(Warp)は、造形物の角や端がベッドから浮き上がってしまう現象です。
素材ごとの反りやすさ
ABSなどの素材は冷える際の収縮が大きく、反りが発生しやすい傾向があります。PLAは比較的反りにくいものの、大きなモデルや薄い形状では反りが出ることがあります。ベッド温度や接着剤の使用、ブリムやラフトの活用が効果的です。
③ 糸引き(Stringing)
糸引き(Stringing)は、移動時にフィラメントが細い糸のように引きずられて残る現象です。
起きる仕組みと対策
ノズルから樹脂がわずかに漏れ出たままヘッドが移動すると、糸状の樹脂が張ってしまいます。リトラクション設定を適切にすること、ノズル温度を高くし過ぎないことが糸引き対策の基本です。
④ ノズル詰まり
ノズル詰まりは、フィラメントのカスや異物がノズル内部に残り、材料の押し出しが阻害される状態です。
詰まる原因とクリーニング方法
温度不足や、異なる素材を連続で使用した際の残りカス、埃やゴミの混入が原因となります。定期的にフィラメントを抜いてクリーニングフィラメントを使用したり、ノズルを取り外して手動で清掃したりすることで、ノズル詰まりを予防・解消できます。
⑤ サポート剥がれ
サポート剥がれは、造形途中でサポート材が外れてしまい、上に乗る部分がうまく造形されない状態です。
サポート密度と接触面の調整
サポートの密度が低すぎたり、接触面が小さすぎたりすると剥がれやすくなります。サポート設定で密度を上げる、接触距離を調整する、造形方向を見直すことで、サポートの安定性を高めることができます。
⑥ エレファントフット
エレファントフットは、造形物の最下部が少し外側へ広がってしまう現象です。象の足のように見えることからこの名前が使われています。
原因と解消方法
ベッド温度が高すぎる場合や、最初の層の押し付けが強すぎる場合に発生します。ベッド温度を適切に下げる、初層の押し出し量を調整する、スライサーのエレファントフット補正機能を使うことで、下部の膨らみを抑えることができます。
⑦ レイヤーシフト
レイヤーシフトは、途中の層からモデルがずれたように造形されるトラブルです。
振動・緩み・速度が原因のケース
造形中の振動や、ベルトの緩み、造形速度の設定ミスなどが原因となり、モーターのステップが飛んでしまうことで発生します。プリンター本体のネジやベルトの締め直し、造形速度の見直しを行うことで、レイヤーシフトの発生を大きく減らすことができます。
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