TPU(ゴムライク)素材とは?特徴と用途5選

「TPU(ゴムライク)素材って、普通のゴムとは何が違うの?」「3Dプリンターで柔らかいパーツを作りたいけど、TPUで本当にうまく作れるの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、TPUはゴムのような柔軟性や弾力性を持ちながら、3Dプリンターでも扱える軟質素材として活用されています。

結論から言うと、TPUはスマホケースやグリップ、保護カバー、クッションパーツなど、曲がる・しなる・衝撃を吸収する部品を作りたいときに役立つ素材です。ただし、硬いフィラメントに比べると造形時に注意が必要なため、特徴や向いている用途を理解してから使うことが大切です。

この記事では、TPU素材の基本的な特徴、ゴム素材との違い、3Dプリンターで作れるもの、代表的な用途5選、造形時の注意点まで初心者にもわかりやすく解説します。

目次

【TPU(ゴムライク)素材とは?基本の特徴を解説】

①TPUはゴムのような柔軟性を持つ樹脂素材

TPUとは、ゴムのような柔軟性と弾力性を持つ樹脂素材のことです。正式には熱可塑性ポリウレタンと呼ばれ、プラスチックの一種でありながら、曲げたり、しならせたりできる性質を持っています。

一般的な3Dプリンター素材であるPLAやABSは、造形後に硬い仕上がりになります。一方でTPUは、力を加えると曲がったり、押すと少し沈み込んだりするため、硬い素材では再現しにくい「柔らかさ」が必要な部品に向いています。

たとえば、スマホケース、グリップ、保護カバー、滑り止めパーツ、クッション材のように、手で触れたときのやわらかさや、衝撃を受け止める性質が求められる場面で使われます。

ただし、TPUは完全なゴムそのものではありません。あくまでゴムのような質感や弾力を持つ樹脂素材です。そのため、ゴム部品とまったく同じ性能を求めるのではなく、3Dプリンターで柔らかいパーツを作るための選択肢として考えると理解しやすくなります。

②3Dプリンターでは軟質フィラメントとして使われる

3DプリンターでTPUを使う場合、多くはFDM方式のプリンターで使用する軟質フィラメントとして扱われます。FDM方式とは、フィラメントを熱で溶かし、ノズルから押し出して積み重ねる造形方式です。TPU自体は3Dプリント専用素材ではありませんが、FDM方式では柔らかいフィラメントとして使われることが一般的です。

PLAやPETGなどの硬いフィラメントと同じようにリール状で販売されていますが、TPUは素材自体が柔らかいため、プリンター内部での送り出しが不安定になりやすい特徴があります。そのため、通常のフィラメントよりも造形速度を遅くしたり、押し出し経路を確認したりする必要があります。

一方で、うまく扱えれば、硬い素材では作れない柔軟な部品を作れるようになります。硬い樹脂では割れやすい部品や、少し曲がってほしいパーツ、手に触れる部分のフィット感を重視したいパーツなどに活用できます。

特に試作品制作では、見た目だけでなく、実際に触ったときの感触や曲がり方を確認できる点が大きなメリットです。製品開発や模型制作、オリジナルパーツ制作などで、素材の選択肢を広げたい場合に役立ちます。

③硬さはショア硬度で表されることが多い

TPUの柔らかさは、商品によって異なります。そのため、TPUフィラメントを選ぶときは、素材名だけでなく硬さの目安も確認することが大切です。

TPUの硬さは、一般的に「ショア硬度」という数値で表されることが多くあります。ショア硬度とは、ゴムや軟質素材の硬さを示す指標です。数値が低いほど柔らかく、数値が高いほど硬めになります。

3Dプリンター向けのTPUフィラメントでは、比較的扱いやすい硬めのタイプから、よりゴムに近い柔らかいタイプまであります。初心者がいきなり柔らかすぎるTPUを選ぶと、フィラメントの送り出しが難しくなり、詰まりや造形不良につながる場合があります。

そのため、初めてTPUを使う場合は、柔らかさだけで選ぶのではなく、使用する3Dプリンターとの相性や、フィラメントメーカーが推奨する設定条件も確認することが重要です。

TPUは「柔らかい素材」とひとくくりにされがちですが、実際には硬さや扱いやすさに差があります。 作りたいものに必要な柔軟性と、プリンターで安定して造形できるかどうかの両方を見ながら選ぶことが、失敗を減らすポイントです。

【TPUとゴム・TPE・一般的なフィラメントの違い】

①TPUとゴムの違い

TPUは「ゴムのような柔らかさ」を持つ素材ですが、一般的なゴムとまったく同じものではありません。TPUは熱で溶かして成形できる熱可塑性樹脂の一種です。一方、いわゆるゴム製品には、加硫と呼ばれる工程によって弾力性や耐久性を高めて使われるものが多くあります。

3Dプリンターで扱いやすいのは、熱で溶けて冷えると固まる性質を持つTPUです。FDM方式の3Dプリンターでは、フィラメントを加熱してノズルから押し出すため、熱可塑性のあるTPUが使われます。

一方で、一般的なゴム部品と同じような耐久性、気密性、水密性、耐熱性を必ず再現できるわけではありません。特に、パッキンやシール材のように密閉性が重要な部品では、造形方式や積層の状態によって性能が変わります。

そのため、TPUはゴムの完全な代用品というより、3Dプリンターで柔らかい形状を作るための素材と考えるとわかりやすくなります。

②TPUとTPEの違い

TPUと似た言葉に、TPEがあります。TPEは「熱可塑性エラストマー」の総称で、ゴムのような弾性を持ちながら、熱で成形できる素材のグループを指します。

TPUは、そのTPEの一種です。つまり、TPEという大きな分類の中にTPUが含まれていると考えると理解しやすくなります。

3Dプリンター用フィラメントでは、TPEと表記される素材よりも、TPUと表記される素材の方が見かける機会が多くあります。TPUは柔軟性に加えて、摩耗に強く、反発性もあるため、柔らかいパーツを作る素材としてよく使われます。

ただし、商品名やメーカーによって表記や硬さは異なります。「TPEだから柔らかい」「TPUだから扱いやすい」と単純に判断するのではなく、実際にはショア硬度、推奨温度、対応プリンター、用途例を確認することが大切です。

③PLA・ABS・PETGとの違い

3Dプリンターでよく使われるPLA、ABS、PETGは、基本的に硬い仕上がりになる素材です。模型、ケース、治具、試作品など幅広く使えますが、造形後に大きく曲げたり、押して変形させたりする用途には向いていません。

一方、TPUは柔軟性があるため、曲げたい部品、衝撃を吸収したい部品、手に触れる部分のフィット感を出したい部品に向いています。たとえば、スマホケースや滑り止め、グリップ、クッション材のような用途では、硬いフィラメントよりTPUの方が適しています。

ただし、TPUは柔らかいぶん、PLAのように簡単に扱える素材ではありません。硬いフィラメントに比べて、フィラメントの送り出しが不安定になりやすく、糸引きや詰まりが起こることもあります。また、寸法精度が必要な部品では、形状や設定によって誤差が出やすくなります。

そのため、素材選びでは「強いか弱いか」だけで判断するのではなく、硬さが必要なのか、柔らかさが必要なのかを基準に考えることが大切です。硬く形状を保ちたいならPLAやPETG、衝撃吸収や曲がりやすさを重視するならTPUというように、用途によって使い分けると失敗を減らせます。

【TPU素材のメリット】

①柔軟性と弾力性がある

TPU素材の大きなメリットは、曲げたり、しならせたりできる柔軟性があることです。PLAやABSのような硬い素材では、力を加えると割れたり、変形したまま戻らなかったりすることがあります。一方でTPUは、力を受けてもある程度変形し、元の形に戻ろうとする弾力性を持っています。

この特徴により、手で触れるパーツや、曲がることを前提にした部品に使いやすくなります。たとえば、スマホケースやグリップのように、持ったときのフィット感が必要なものは、硬い素材よりもTPUの方が使いやすい場合があります。

また、柔軟性があることで、取り付けや取り外しがしやすいパーツにも向いています。少し広げながら装着するカバーや、対象物に沿わせて使う保護パーツなどは、TPUの特性を活かしやすい用途です。

ただし、柔らかさはフィラメントの種類や硬度によって変わります。TPUであればすべて同じように柔らかいわけではないため、用途に合わせて硬さを確認することが大切です。

②耐摩耗性・耐衝撃性に優れている

TPUは、柔らかいだけでなく、こすれや衝撃に強い性質を持つ素材としても使われます。摩擦が起こる部分や、落下・接触による衝撃を受けやすい部分に使いやすい点が特徴です。

たとえば、机や床に接する足ゴム、工具や機器の保護カバー、模型用のタイヤ、持ち手部分のグリップなどは、摩耗や衝撃への強さが求められます。TPUは硬い素材のように欠けにくく、柔らかさによって衝撃を逃がしやすいため、このようなパーツに活用しやすい素材です。

特に、試作品の段階では「実際に使ったときにどの部分が当たるのか」「手に持ったときに違和感がないか」「落としたときにどの程度保護できるか」を確認したい場面があります。TPUを使うことで、見た目だけでなく、使用感に近い検証がしやすくなります。

ただし、耐摩耗性や耐衝撃性は、素材の種類、造形方向、積層状態、使用環境によって変わります。強い荷重が長時間かかる部品や、安全性が求められる部品では、実使用前の確認が必要です。

③滑り止めや保護パーツに使いやすい

TPUは柔軟性があるため、接地面に使うと硬い樹脂よりも対象物になじみやすく、滑り止めパーツとして活用しやすい素材です。ただし、滑りにくさはTPUの硬さや表面形状、使用環境によって変わります。

たとえば、机の上で動きやすい部品の底面、機械や工具の持ち手、家具や機器の接触部分、カメラや電子機器の保護カバーなどに活用できます。硬い素材では対象物を傷つけやすい場面でも、TPUの柔らかさがクッションの役割を果たします。

また、オリジナル形状の保護パーツを作りたいときにも便利です。市販品ではサイズが合わない場合でも、3Dデータを作成できれば、対象物に合わせた形状で柔らかい部品を作れます。少量だけ必要なパーツや、試作段階のカスタム部品では、TPUの活用価値が高くなります。

一方で、滑り止め性能や保護性能を過信するのは避ける必要があります。TPUは便利な素材ですが、使用環境によっては摩耗したり、変形したりする場合があります。特に屋外や高温環境、油分や薬品に触れる場所で使う場合は、フィラメントの仕様を確認したうえで判断することが大切です。

TPUのメリットは、柔らかさだけではありません。 弾力性、摩耗への強さ、衝撃吸収性、滑りにくさを活かすことで、硬いフィラメントでは作りにくい実用的なパーツ制作に役立ちます。

【TPU素材のデメリットと注意点】

①硬い素材より造形が難しい

TPU素材は柔軟性がある反面、PLAやPETGのような硬いフィラメントに比べて、3Dプリンターでの造形難易度が高い素材です。

理由は、フィラメントそのものが柔らかく、プリンター内部で押し出すときに曲がったり、たわんだりしやすいためです。硬いフィラメントであれば、エクストルーダーからノズルまで比較的安定して送れますが、TPUは柔らかいため、送り出し経路の中で引っかかったり、押し出し量が不安定になったりすることがあります。

その結果、造形中に材料がうまく出ない、表面が荒れる、途中で詰まる、糸引きが増えるといったトラブルにつながる場合があります。

特に初めてTPUを使う場合は、いきなり大きな部品を作るのではなく、小さなテストモデルで設定を確認することが大切です。造形速度、温度、リトラクション、ベッドへの定着などを少しずつ調整しながら、安定して出力できる条件を探す必要があります。

②寸法精度が出にくい場合がある

TPUは柔らかく変形しやすい素材のため、硬いフィラメントに比べて寸法精度が出にくい場合があります。造形後に少し伸びたり、押されて形が変わったりするため、ぴったりはめ込む部品や、細かい寸法管理が必要な部品では注意が必要です。

たとえば、機械部品の接合部、ネジ穴、差し込み部分、精密な治具などでは、TPUの柔らかさがメリットではなくデメリットになることがあります。硬く形状を保ちたい部品であれば、PLA、PETG、ABSなどの方が適している場合があります。

また、柔らかい素材は造形中にもわずかに動きやすく、積層面や細部の再現性に影響することがあります。形状が細長いもの、薄すぎるもの、細かな凹凸が多いものは、設計通りに仕上がりにくいことがあります。

TPUで寸法を合わせたい場合は、最初から完成品を一度で作ろうとせず、試作を前提に設計することが重要です。取り付け部分には少し余裕を持たせる、厚みを確保する、細すぎる形状を避けるなど、柔らかい素材に合わせた設計を行うことで失敗を減らせます。

③湿気や糸引きに注意が必要

TPU素材を扱うときは、湿気にも注意が必要です。TPUフィラメントは保管環境によって湿気を吸うことがあり、湿気を含んだまま造形すると、表面が荒れたり、気泡が出たり、押し出しが不安定になったりする場合があります。

また、TPUは糸引きが起こりやすい素材でもあります。糸引きとは、ノズルが移動するときに細い糸のような樹脂が残る現象です。特に複数の島状パーツがある形状や、ノズル移動が多いモデルでは目立ちやすくなります。

湿気や糸引きを防ぐためには、フィラメントを開封後に密閉して保管し、乾燥剤を使うことが基本です。長期間放置したフィラメントを使う場合は、必要に応じて乾燥処理を行うと安定しやすくなります。

糸引きについては、リトラクション設定やノズル温度、造形速度を調整することで軽減できる場合があります。ただし、TPUはリトラクションを強くしすぎると、フィラメントの送り出しが不安定になることがあります。そのため、PLAと同じ感覚で設定するのではなく、TPUに合わせて控えめに調整することが大切です。

TPUは便利な素材ですが、扱いやすさだけで見ると初心者向けとは言い切れません。 ただし、特徴を理解して設定を調整すれば、硬い素材では作れない柔軟なパーツ制作に活用できます。

【TPU素材で作れるもの・代表的な用途5選】

①スマホケース・保護カバー

TPU素材の代表的な用途のひとつが、スマホケースや保護カバーです。TPUは柔軟性があるため、対象物に沿うように装着しやすく、角や表面を衝撃から守るパーツに向いています。

硬い素材でケースを作ると、取り付け時に割れやすかったり、落下時の衝撃をそのまま受けやすかったりします。一方でTPUは、ある程度しなりながら装着できるため、カバー形状との相性が良い素材です。

また、スマホケース以外にも、リモコン、カメラ、電子機器、工具などの保護カバーにも活用できます。市販品では合うサイズがない場合でも、3Dデータを作成すれば、対象物に合わせた形状で作れる点がメリットです。

ただし、薄すぎる形状では破れやすくなったり、細部がきれいに出にくくなったりする場合があります。保護カバーとして使う場合は、必要な厚みを確保し、角や取り付け部分に無理な力が集中しない形状にすることが大切です。

②グリップ・滑り止めパーツ

TPUは、手で触れる部分や滑り止めが必要な部分にも使いやすい素材です。柔らかさと摩擦感があるため、グリップや滑り止めパーツに向いています。

たとえば、工具の持ち手、自転車やカメラ用品の補助パーツ、機械の操作部、家具や小物の底面パーツなどに活用できます。硬い素材では手になじみにくい部分でも、TPUを使うことで握りやすさや接触時の感触を改善できます。

滑り止めとして使う場合は、素材の柔らかさだけでなく、接地面の形状も重要です。表面に凹凸をつけたり、接触面積を増やしたりすると、使いやすい形状に近づけやすくなります。

ただし、強い摩擦が長期間かかる場所では、摩耗によって形状が変わる場合があります。実用品として使う場合は、試作段階で実際に触ったり動かしたりして、耐久性を確認することが重要です。

③クッション材・緩衝パーツ

TPUは、衝撃をやわらげるクッション材や緩衝パーツにも使われます。硬い素材では衝撃を受けたときに割れたり、相手側を傷つけたりすることがありますが、TPUは柔らかさによって衝撃を受け止めやすい特徴があります。

たとえば、機器の接触部分、ケース内部の保護パーツ、輸送時の簡易クッション、ロボットや模型の接触部品などに活用できます。特に、少量だけ必要な専用形状の緩衝材を作りたい場合、3DプリンターとTPUの組み合わせは便利です。

また、クッション性を調整したい場合は、素材の硬度だけでなく、内部構造や充填率も関係します。同じTPUでも、中身を詰めるか、少し空洞を持たせるかによって、押したときの感触が変わります。

ただし、強い荷重が継続的にかかる用途では、変形したまま戻りにくくなる場合があります。そのため、長期間の荷重や安全性が関わる部品では、実際の使用条件に近い状態で確認することが必要です。

④タイヤ・足ゴム・模型用パーツ

TPUは、タイヤや足ゴム、模型用パーツにも適した素材です。柔軟性と摩擦感があるため、床や机に接する部品、動きのあるパーツ、見た目だけでなく触感も再現したい模型部品に使いやすくなります。

たとえば、ラジコンや模型のタイヤ、機器の脚部、家具や小物の滑り止め足、ディスプレイ用模型の軟質パーツなどが挙げられます。硬い素材では滑りやすい部分でも、TPUを使うことで接地感を持たせやすくなります。

足ゴムのような部品では、対象物を傷つけにくい点もメリットです。硬いプラスチック部品が直接机や床に当たると傷がつく場合がありますが、TPUで接触部分を作ることで、接触時の負担をやわらげられます。

ただし、タイヤのように回転や摩擦が続く用途では、摩耗や発熱の影響を受ける場合があります。模型や軽負荷の用途では使いやすい一方で、高速回転や強い荷重がかかる用途では、素材の仕様を確認したうえで判断することが大切です。

⑤試作品・治具・カスタム部品

TPUは、製品開発やものづくりの現場で、試作品や治具、カスタム部品にも活用できます。特に、柔らかさ、フィット感、衝撃吸収性を確認したい試作では、硬い素材だけでは判断できない使用感を確認できます。

たとえば、新製品のグリップ部分、装着部品、保護パーツ、クッション部品、柔らかい外装部品などの試作に向いています。3Dプリンターを使えば、金型を作る前に形状や使い心地を確認できるため、開発段階の検討に役立ちます。

また、現場で使う専用治具やカスタム部品にも適しています。対象物を傷つけたくない固定部品や、少しだけしなってほしい補助パーツなどは、TPUの特徴を活かしやすい用途です。

一方で、精密な寸法管理が必要な治具や、強い力を受ける構造部品には注意が必要です。TPUは柔らかく変形する素材であるため、硬さや剛性が必要な場面では、PLA、PETG、ナイロンなど他の素材と比較して選ぶことが大切です。

TPUは、柔らかさが必要な実用品や試作品に向いた素材です。 ただし、すべての用途に万能ではないため、「曲がることがメリットになる部品かどうか」を基準に考えると、適した使い道を判断しやすくなります。

【3DプリンターでTPUを使うときのポイント】

①造形速度は遅めに設定する

TPUを3Dプリンターで使うときは、まず造形速度を遅めに設定することが重要です。TPUは柔らかいフィラメントのため、PLAやPETGと同じ速度で押し出そうとすると、フィラメントがたわんだり、押し出し量が不安定になったりする場合があります。

造形速度を落とすことで、フィラメントの送り出しが安定しやすくなり、表面の乱れや押し出し不足を抑えやすくなります。特に初めてTPUを使う場合は、いきなり速い設定で出力するのではなく、メーカーが推奨する条件を確認しながら、低速でテスト造形を行うことが大切です。

また、速度を下げると造形時間は長くなりますが、TPUでは安定性を優先する方が失敗を減らせます。短時間で出力しようとして失敗するよりも、最初から安定した条件で造形する方が、結果的に材料や時間の無駄を抑えられます。

②フィラメントの送り出し経路を確認する

TPUは柔らかいため、フィラメントの送り出し経路が長かったり、隙間が大きかったりすると、途中で曲がったり詰まったりしやすくなります。そのため、使用する3DプリンターがTPUに対応しているか、エクストルーダーからノズルまでの経路が安定しているかを確認する必要があります。

一般的には、フィラメントの送り出し経路が短いダイレクト式のプリンターは、TPUを扱いやすい傾向があります。一方、ボーデン式のプリンターでは、フィラメントが長いチューブ内を通るため、柔らかいTPUでは押し出しが不安定になる場合があります。

ただし、ボーデン式でも硬めのTPUであれば造形できる場合があります。重要なのは、プリンターの方式だけで判断するのではなく、使用するTPUの硬度、メーカーの推奨条件、実際の造形結果を確認することです。

フィラメントが途中で引っかかる、ノズルから材料が安定して出ない、押し出し音が不自然になる場合は、送り出し経路やテンションを見直す必要があります。

③リトラクションや温度設定を調整する

TPUをきれいに造形するには、リトラクションや温度設定の調整も重要です。リトラクションとは、ノズル移動時にフィラメントを少し引き戻し、余分な樹脂が垂れないようにする設定です。

TPUは糸引きが起こりやすいため、リトラクション設定を調整したくなります。しかし、柔らかいTPUでリトラクションを強くしすぎると、フィラメントの送り出しが不安定になり、詰まりや押し出し不良の原因になることがあります。

そのため、TPUではリトラクションを控えめに設定し、必要に応じて少しずつ調整することが大切です。また、ノズル温度が高すぎると糸引きが増えやすく、低すぎると押し出しが不安定になる場合があります。フィラメントごとに推奨温度が異なるため、必ずメーカーの推奨範囲を確認して設定します。

TPUの設定は、プリンターやフィラメントの種類によって最適値が変わります。最初から完璧な設定を目指すのではなく、小さなモデルでテストしながら、糸引き・表面品質・押し出し安定性のバランスを見て調整することが大切です。

④フィラメントの湿気対策を行う

TPUを安定して造形するためには、フィラメントの湿気対策も欠かせません。TPUは保管環境によって湿気を吸うことがあり、湿気を含んだ状態で造形すると、ノズルから樹脂が出るときに気泡が発生したり、表面が荒れたりする場合があります。

開封後のTPUフィラメントは、密閉袋やドライボックスで保管し、乾燥剤を一緒に入れておくと安心です。湿度の高い場所に長時間置いたフィラメントは、造形前に乾燥させることで出力が安定しやすくなります。

湿気を吸ったフィラメントでは、造形中に「プチプチ」と音がしたり、表面に細かな荒れが出たりすることがあります。このような症状がある場合は、設定だけでなくフィラメントの状態も確認する必要があります。

TPUは設定の調整だけでなく、保管状態によっても仕上がりが変わる素材です。きれいに造形するためには、プリンター設定とフィラメント管理の両方を意識することが重要です。

【TPU素材が向いている人・向いていない人】

①柔らかい部品を少量作りたい人に向いている

TPU素材は、柔らかい部品を少量だけ作りたい人に向いています。市販品ではサイズが合わない保護カバーや、特定の形状に合わせた滑り止め、試作品用のグリップなど、既製品では対応しにくいパーツを作りたい場合に役立ちます。

特に3Dプリンターでは、金型を作らずに1個から形状を作れるため、試作やカスタム部品との相性が良い素材です。硬い素材では再現しにくいフィット感やクッション性を確認できるため、製品開発や趣味の制作でも活用しやすくなります。

また、「少し曲がってほしい」「対象物に沿わせたい」「衝撃をやわらげたい」といった目的がある場合にもTPUは有効です。たとえば、手に触れるパーツや、取り付け時に少し広げる必要があるカバーなどでは、TPUの柔軟性がメリットになります。

ただし、少量制作に向いているからといって、どのような形状でも簡単に作れるわけではありません。薄すぎる部分や細かすぎる形状は造形が難しくなるため、TPUの特性に合わせた設計が必要です。

②高精度・高剛性が必要な部品には向かない

TPU素材は柔らかさが魅力ですが、高い寸法精度や剛性が必要な部品には向かない場合があります。力を加えると変形しやすいため、正確な位置決めが必要な治具や、硬く固定したい部品では注意が必要です。

たとえば、機械部品の固定パーツ、精密なネジ穴、強い荷重を支える構造部品、変形してはいけないケース部品などでは、TPUよりもPLA、PETG、ABS、ナイロンなどの硬い素材が適している場合があります。

また、TPUは柔らかいため、造形後の測定や組み付け時にも変形しやすい特徴があります。寸法上は合っていても、実際に押し込んだときに伸びたり、長期間使用するうちに形状が変わったりする可能性があります。

そのため、TPUを選ぶときは「柔らかい方が便利そう」という理由だけで決めるのではなく、部品に必要な役割を明確にすることが重要です。曲がることがメリットになる部品にはTPU、形状をしっかり保つ必要がある部品には硬い素材というように使い分けると、素材選びで失敗しにくくなります。

③失敗できない場合は外注も検討する

TPUは自分で造形できる素材ですが、初めて扱う場合は設定調整に時間がかかることがあります。短納期の試作品や、見た目の仕上がりを重視する部品、複数個を安定して作りたい場合は、3Dプリントサービスへの外注も選択肢になります。

自作のメリットは、すぐに試せることと、設定を調整しながら形状を改善できることです。趣味用途や試行錯誤できる制作では、自分でTPUフィラメントを使って造形する価値があります。

一方で、業務用の試作品や、納期が決まっている部品では、造形失敗による時間のロスが問題になることがあります。TPUは硬いフィラメントよりもトラブルが起こりやすいため、材料の状態やプリンター設定に慣れていない場合は、思ったように仕上がらないこともあります。

外注を検討する場合は、作りたい部品の用途、必要な柔らかさ、数量、納期、外観品質を整理して相談するとスムーズです。特に、失敗できない試作や品質を安定させたい部品では、自作と外注のどちらが適しているかを比較することが大切です。

【TPU素材を使う前に確認しておきたいこと】

①作りたい部品に必要な柔らかさを確認する

TPU素材を使う前に、まず確認したいのは作りたい部品にどれくらいの柔らかさが必要かという点です。TPUといっても、すべてが同じ硬さではありません。比較的硬めで扱いやすいものもあれば、よりゴムに近い柔らかさを持つものもあります。

たとえば、保護カバーやスマホケースのように、少ししなりながら装着したい部品であれば、柔軟性と形状保持のバランスが重要です。一方、クッション材や緩衝パーツのように、押したときの沈み込みや衝撃吸収性を重視する場合は、より柔らかさを意識して選ぶ必要があります。

ただし、柔らかければ柔らかいほど使いやすいわけではありません。柔らかすぎるTPUは造形中にフィラメントがたわみやすく、プリンターで扱いにくくなる場合があります。また、完成後の部品も形状を保ちにくくなることがあります。

そのため、TPUを選ぶときは「柔らかそうだから選ぶ」のではなく、部品に必要な柔軟性と形状保持のバランスを考えることが大切です。実用品として使う場合は、小さな試作品を作り、実際に曲げる、押す、装着するなどの確認を行うと判断しやすくなります。

②使用する3DプリンターがTPUに対応しているか確認する

次に確認したいのは、使用する3DプリンターがTPUに対応しているかどうかです。TPUはFDM方式の3Dプリンターで使われることが多い素材ですが、すべての機種で安定して造形できるわけではありません。

特に重要なのは、フィラメントの送り出し方式です。TPUは柔らかいため、エクストルーダーからノズルまでの経路が不安定だと、途中で曲がったり詰まったりする場合があります。一般的には、フィラメントの経路が短いダイレクト式の方が扱いやすい傾向があります。

ただし、ボーデン式でも硬めのTPUであれば造形できる場合があります。大切なのは、プリンターの仕様、メーカーの案内、使用するフィラメントの推奨条件を事前に確認することです。

また、ノズル温度やベッド温度がフィラメントの推奨範囲に対応しているかも確認が必要です。対応温度の範囲外で無理に造形すると、押し出し不良や定着不良、表面荒れの原因になります。

TPUは、PLAのように気軽に扱える場面もありますが、設定や機種との相性が仕上がりに大きく影響します。プリンターとフィラメントの相性を確認してから使うことが、安定した造形につながります。

③用途に合わせて自作か外注かを判断する

TPU素材を使う場合は、自分で3Dプリンターを使って造形する方法と、3Dプリントサービスに外注する方法があります。どちらが適しているかは、用途、数量、納期、必要な品質によって変わります。

自作が向いているのは、試行錯誤しながら形状を調整したい場合や、趣味用途で少しずつ設定を試せる場合です。小さなパーツであれば、テスト造形を繰り返しながら、柔らかさやフィット感を確認できます。

一方で、業務用の試作品や、短納期で失敗できない部品、複数個を安定して作りたい場合は、外注を検討する価値があります。TPUは設定調整が必要な素材のため、慣れていない状態でいきなり本番用の部品を作ると、造形失敗によって時間や材料を無駄にする可能性があります。

外注を検討する場合は、作りたい部品の用途、必要な柔らかさ、サイズ、数量、使用環境を整理しておくと相談しやすくなります。特に、パッキンや緩衝材、保護パーツのように使用条件が仕上がりに影響するものは、目的を明確に伝えることが重要です。

TPUは、柔らかい部品を作るための便利な素材です。しかし、素材の特性、プリンターとの相性、用途への適合性を確認せずに使うと、思ったような仕上がりにならない場合があります。使う前に「何を作りたいのか」「どの程度の柔らかさが必要なのか」「自作で対応できるのか」を整理することが、失敗を減らす近道です。

【まとめ】

TPU(ゴムライク)素材は、ゴムのような柔軟性や弾力性を持ち、3Dプリンターで柔らかいパーツを作りたいときに役立つ素材です。スマホケース、保護カバー、グリップ、滑り止め、クッション材、タイヤ、足ゴム、試作品など、硬い素材では作りにくい部品に活用できます。

一方で、TPUはPLAやPETGのような硬いフィラメントに比べて、造形難易度が高い素材です。フィラメントの送り出しが不安定になりやすく、糸引き、湿気、寸法精度にも注意が必要です。

TPUを使うときは、作りたい部品に必要な柔らかさ、使用する3Dプリンターの対応状況、フィラメントの推奨条件を確認することが大切です。柔らかさがメリットになる部品にはTPUが向いていますが、高精度や高剛性が必要な部品には他の素材が適している場合があります。

TPUは、特徴を理解して使えば、3Dプリントで作れるものの幅を広げてくれる素材です。 自作で試す場合も、外注を検討する場合も、用途に合わせて適切に判断することで、柔らかいパーツ作りに活かしやすくなります。

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